【新リース会計への対応】

【1,まずどこから手を付けるのか?】

リース契約の概算数の把握→2

まず契約内容を整理・棚卸しする必要がある

契約件数が少ない場合でも、新リース会計基準では契約条件の把握や計算処理が複雑になるため、件数だけで「Excel管理でも大丈夫」と、対応方法を判断しないことが重要。

 

現状のリース資産管理

・特に管理していない

・Excelで管理している

・システムで管理している

 

利用している会計システム・ERPの状況

・新リース会計基準に対応した機能がある、またはリリース予定が確定している

・新リース会計基準への対応が難しそう

・対応可否が分かっていない

新リース会計基準では、様々な契約に基づいた計算、複雑な会計仕訳、注記情報の作成などが求められる。現在利用しているシステムで、どこまで対応できるのかは、確認しておきたい。

新リース会計基準への対応が出来ているソフトであるか(システム確認のポイント)。

・適用初年度における訴求額の自動計算が可能か

・使用権資産・リース負債の額を自動計算できるか

・リース負債の見直しの実務に対応できるか

・仕訳の自動起票及び会計システムへの仕訳連携は可能か

・財務諸表に注記すべき金額の自動集計は可能か

【2,リース資産に該当するかどうか(リースの識別、基準25項、26項)】

※「リース」とは、原資産(リースの対象となる資産)を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約→そのため、全ての契約行為の中から、リースに該当する契約を識別しなければならない

 

定額支払契約をリスト化

リース該当性の判定(特定された資産、資産を支配しているか)…特定の物理的資産、使用する権 利、使用期間全体を通じてであること、対価と交換であること。

 

勘定分析

仕訳や勘定科目(特に賃借料、地代家賃、委託費、通信費、印刷費など)から対象となる資産を推察し、精査する必要がある。

 

特定された資産(指針6項)…実質的な入替権が無い(提供側が入れ替える実質的能力を有し、かつ入れ替えることにより利益を享受できる場合は特定無し)、物理的区分可能性(物理的に区分できる一部であること)

支配(指針5項)…使用の指図(顧客が使用期間全体にわたる使用方法を指図する権利)、経済的利益(経済的利益のほとんどを享受)

 

借手の指図権を妨げるものではない例示…営業時間の制限、想定されている用途に限定、転貸禁止、増改築や工作物設置に物件オーナーの承諾を必要とする

 

原則としてリースを構成する部分(リース部分)と構成しない部分(サービス部分)の区分を明確にする必要あり(基準28項、指針9項)

契約により明確に区分されていない場合は各々の独立価格の比率で配分。契約書にて各対価が区分されていた場合も各々の独立価格であるか検討が必要=区分の妥当性を検討する必要あり(指針11項)

区分せずにすべてをリース部分とすることもできる(基準29項)

 

共益費、管理費はリース料ではない

礼金、更新料はリース料に含まれる

SAAS型のクラウドサービスへのアクセス契約はサービス契約(支配が移転していないのでリースではない)

無形固定資産(ソフトウェア等)のリースについては適用しないことが出来る。

【3,リース期間の決定】

解約不能期間に延長オプションの行使期間(延長オプション行使が合理的に確実である場合)、解約オプションの非行使期間(解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)を足した期間(基準31項)

 

合理的に確実…蓋然性が相当程度に高いこと(一番可能性が高いことではない)…80%程度は必要

 

考慮する要因(指針17項)…延長または解約オプションの対象機関に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)、大幅な賃借設備の改良の有無、リースの解約に関連して生じるコスト、企業の事業内容に照らした原資産の重要性、延長または解約オプションの行使条件

 

リース期間、資産除去債務の年数(法律上の義務が存在する固定資産が除却されるまでの期間)、固定資産の耐用年数(経済的使用可能予測機関)

→これら3つの期間は整合しなければならないか。関連する見積もり項目として慎重に検討する必要あり(基本的には一致する)

合理的理由があれば整合しないこともありうる。

【4,簡便的な取扱い(リース期間が1年以下の短期リース(指針4項、20項)、リース総額300万円以下または5000米ドル以下の少額リース(指針22項)))

但し契約期間が短期(12か月以内)であっても延長オプションありで更新することが確実である場合は更新される期間も加えて短期かどうかを判断しなければならない。=これらも考慮したリース期間が12か月以内でなければならない

短期リースは金額について制限なし

少額リースについてはリース期間または契約期間のどちらで判断してもよい

少額リースであっても重要性がある場合は簡便的な取扱いはできない

短期リースにかかる費用が含まれる科目と金額を集計して注記する必要あり(少額リースは集計不要)

【5,割引率(指針37項)】

リース負債の現在価値を算定するために用いる割引率(貸手が提供してくれる場合はその割引率)

→貸手が提供してくれない場合の割引率の決定が必要

借り手の追加借り入れに適用されると合理的に見積もられる利率(借手の追加借入利子率)

例えば、新規長期借入金等の利率(借入が無い場合、例えばリース負債の期間に当該金額を借り入れるとするとどれくらいの利率になるかを金融機関に聞くというのもあり)、借手のリース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッドを加味した利率

 

通常民間会社であれば借入金をしているので信用スプレッドは算定できるであろうが、特殊な法人の場合で不明な場合は類似の業態の借入金の利率を聞いて信用スプレッドを出すというのもありうる。リース期間とその借入金の期間は違うであろうことから、リース期間に対応する例えば国債利率にその信用スプレッドを足すなどの補正が必要となる。

どのように算定したのかの根拠をきちんと記録に残す必要がある。

【6, 使用権資産、リース負債の計上(基準36項、37項)】

リース開始日にリース料総額の現在価値で使用権資産、リース負債を計上

 

利息相当額については借手のリース期間にわたり原則として利息法で配分(指針39項)

使用権資産については減価償却する。

 

使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い(指針40項)

・総額法…リース料から利息相当額の合理的な見積額を控除せずにリース料総額を使用権資産・リース負債に計上する方法=支払利息は計上しない

・利息定額法…利息相当額の合理的な見積額を控除するが、利息費用を毎期定額で計上する方法

【7,適用初年度の「経過措置」の選択】

新基準を初めて適用する年度には、過去のすべてのリース契約に遡って新基準を適用する実務負担を軽減するため、「経過措置」が認められている。

 

移行方法には、大きく分けて2つのアプローチがある(指針118項)

原則法(完全遡及アプローチ)=過去の期間すべてに新リース会計基準を遡及適用。過去の財務諸表を、新基準を当初からずっと適用していたかのように遡って修正する方法。財務諸表の比較可能性は高まるが、過去の契約すべてについて遡及計算が必要となり、実務的な負担は非常に大きくなる

簡便法(修正遡及アプローチ)=実務的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に累積的な影響額を一度に加減(2026年期首に加減することで過去に遡って遡及適用しなくてよい)

 

簡便法の中でも、特にこれまで費用処理してきた旧オペレーティング・リースに対しては、実務負担を大幅に軽減できる、特例的な計算方法が認められている(指針123項)

             ↓

①  リース負債の計算: 適用初年度の期首時点における、残りのリース料総額を、その時点の追加借入利子率で割り引いて計算する。

②  使用権資産の計算: 上記①で計算したリース負債と同額とする。

この方法の最大のメリットは、リース契約を開始した時点まで遡って計算する必要がない点である。ただし、どの経過措置を選択するかは、会計監査人と事前に十分協議し、企業の状況に最も適した方法を慎重に決定することが重要。この一度きりの選択が、移行時の会計処理と、その後の財務諸表の比較可能性に影響を与えることを理解しておく必要がある。

【8,新リース会計における表示】

貸借対照表(BS)

使用権資産: 原則として、有形固定資産や無形固定資産など、リースしている資産(原資産)の種類に応じた区分に含めて表示。ただし、重要性がある場合は、独立した科目として「使用権資産」と表示することも可能(基準49項)。

リース負債: 貸借対照表日後1年以内に支払期限が到来する部分は「流動負債」、それを超える部分が「固定負債」として表示。また、他の負債とは区分して表示するか、他の負債に含める場合は注記でその金額を示す必要あり(基準50項)。

 

損益計算書(PL)

減価償却費: 使用権資産の減価償却費は、その資産の用途に応じて、通常「販売費及び一般管理費」または「売上原価」に計上。

支払利息: リース負債に係る利息は「営業外費用」に計上。他の支払利息と合算して表示することも可能だが、その場合は注記で金額を示す必要あり(基準51項)。

【9,キャッシュ・フロー計算書(CF)における支払リース料の分類変更】

これまでオペレーティング・リースの支払額は、全額が「営業活動によるキャッシュ・フロー」に分類されていたが、新基準では変更になる。

リース負債の元本返済部分: 「財務活動によるキャッシュ・フロー」に表示。

支払利息部分: 「営業活動によるキャッシュ・フロー」または「財務活動によるキャッシュ・フロー」に表示(企業が採用している会計方針による)。

【10,注記(開示、基準54項、55項)】

財務諸表利用者がリース活動を理解するための追加情報

 

開示が求められる主な情報は以下の通り

区分

主な開示要求事項

参照条文

定性的情報

・リース活動の概要 ・重要な会計方針・重要な判断(リース期間の決定方法など)

指針95項、97項

定量的情報

・使用権資産の原資産クラスごとの帳簿価額 ・リース関連の損益額(減価償却費、支払利息、短期・少額リースの費用など) ・リース負債の期首から期末への増減内訳 ・リース負債の年別の返済予定額

指針99項、100項、102項

【11,借上社宅(指針68項)】

サブリース取引(指針89項)例えば借上社宅

貸手→法人(中間的な貸手)→借手(社員)

①  通常のサブリース(②③に当てはまらない)=原則的な会計処理

②  パススルー型のサブリース(指針92項、中間的な貸手がヘッドリースのリスクを負わない場合→受取・支払リース料を純額で処理(ヘッドリースにおける使用権資産/リース負債は計上しない)することができる

③  転リース取引(指針93項、同一資産をほぼ同一条件でリース)→リース債権とリース債務を両建計上。受取・支払リース料を純額で転リース差益等として処理することができる

パススルー型の場合には借手がヘッドリースの貸手に直接支払う。原状回復義務を借手が負う。転貸借についてヘッドリースの貸手の承諾を得ることが定められている。転貸借の使用目的が定められている等

 

借上社宅は原則オンバランス(①)

従来オフバランス処理されていた借上社宅の賃貸借契約は原則オンバランス化。社宅の管理コストや契約条件の見直しが財務面に直結するので、企業は契約内容の精査や資産管理の徹底が必要に。

 

オフバランスにできる「例外規定」

少額リース、短期リースはオフバランスできる

 

適用に向けた「借上社宅の棚卸」と情報整理

社宅管理業務では契約内容や賃貸条件の精査が求められる。企業は借上社宅のすべての契約を棚卸しし、契約期間・賃料・共益費・更新条件などの詳細情報を整理。賃料の支払スケジュールや共益費の取り扱いも財務処理に直結。会計システムや管理台帳の整備も併せて行うことが重要。

 

契約更新時の実務:「再見積もり」の発生

契約更新時には、リース期間や賃料の変更が発生する場合=新リース会計基準ではこうした契約変更に応じて「再見積もり」を行う必要あり

更新後の契約条件を詳細に把握し、使用権資産やリース負債の計上額を見直すための情報を整理することが必要(具体的には、契約期間の延長や短縮、賃料・共益費の変更、更新オプションの有無などを棚卸しし、会計システムや管理台帳に反映)

【12,リース会計における法人税・消費税】

リース会計における法人税

第1 法人税基本通達関係 ○ リース税制の見直し(法令改正) 「リースに関する会計基準」(以下「新リース会計基準」といいます。)の公表に伴い、令和7年度の税制改正により、 リース税制について次の改正が行われました。

⑴ オペレーティング・リース取引に係る契約をした事業年度以後の各事業年度においてその契約に基づきその法人が支払うこととされている金額がある場合には、その支払うこととされている金額のうち債務の確定した部分の金額をその各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する(すなわち、引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金の額に算入する)こととされました。

ファイナンスリース取引=売買処理

オペレーティング・リース取引=賃貸借処理(別段の定め無しから法法53に規定された)

 

リース会計における消費税

消費税は法人税の課税所得の計算における取扱いの例による。

 

消費税法基本通達の一部改正について(法令解釈通達)

(リース取引の実質判定)

5-1-9 事業者が行うリース取引が、当該リース取引の目的となる資産の譲渡若しくは貸付け又は金銭の貸付けのいずれに該当するかは、原則として、所得税又は法人税の課税所得の計算における取扱いの例により判定するものとし、この場合には、次のことに留意する。

 ⑴ 所法第67条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》又は法法第64条の2第1項《リース取引に係る所得の金額の計算》の規定により売買があったものとされるリース取引については、当該リース取引の目的となる資産の引渡しの時に資産の譲渡があったこととなる。

 (注) この場合の資産の譲渡の対価の額は、当該リース取引に係る契約において定められたリース資産の賃貸借期間(以下9-1-31及び 11-3-2の2において「リース期間」という。)中に収受すべきリース料の額の合計額となる。

 ⑵ 所法第67条の2第2項又は法法第64条の2第2項の規定により金銭の貸借があったものとされるリース取引については、当該リース取引の目的となる資産に係る譲渡代金の支払の時に金銭の貸付けがあったこととなる。

 

消費税法上のリース期間は契約期間であるため、会計上のリース期間と一致しないこともありうる。

 

基本的には消費税の考え方は従来のリース会計処理(=法人税法)のまま。

ファイナンスリース取引(売買処理であり引き渡しを受けた日の属する課税期間において一括して仕入税額控除)

オペレーティング・リース取引(消費税も賃貸借処理であり、支払の都度消費税を認識)

 

会計処理のコツ…いったん賃貸借処理の入力をして消費税を認識したうえで、税抜で逆仕訳を行った上で、会計上の処理を行う。

【13,新基準への対応に向けたアプローチ例】

①  影響度調査

 事前準備(新基準の理解、契約管理の現状把握)

 プロジェクト発足

 予算申請(必要な予算の申請(アドバイザー契約、システム導入改修等あれば))

 影響度調査(対象となるリースの洗い出し、リース資産の重要度の検討)

②  方針決定、仕組構築

 会計方針・開示方針の決定(免除規定、経過措置の適用有無の決定、リース期間の決定、割引率の決定、開示方針の決定、

 監査法人への方針確認協議)

 業務フロー構築(変更後業務フローの構築)

 システム構築(固定資産管理システムの導入、改修、システムトレーニング、稼働テスト)

③  トライアルの実施(どこかのタイミングで注記や表示の練習が必要)

④  新基準適用、改善

 新基準の適用(決算の作成)

 課題対応(解消できなかった課題への対応)

 改善活動(非効率な業務の見直し、システム導入の検討、運用の見直し)

 モニタリング(会計方針内容の継続的なモニタリング、重要性など)